Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『アル中女の肖像』(ウルリケ・オッティンガー)

 

 菊川Strangerにてウルリケ・オッティンガー監督「ベルリン三部作」特集上映。オッティンガーについては何の知識も無かったけど、予告編のヴィジュアルとタイトルが強烈だったので、仕事明け劇場へ。『アル中女の肖像』(1979年)鑑賞。

 

 内容については予備知識ないままに鑑賞。題名や予告編の印象から想像していた映画とは全く違ってた。主人公タベア・ブルーメンシャインが全編呑みまくり、終盤では遂に駅の階段で寝込んだりもするけれど、飲酒の真髄を描くような生々しい映画ではなかった。無表情にグラスを空けるタベア・ブルーメンシャインの態度からは一杯やる歓びは全く感じられない。映画の見せ場は飲酒ではなかった。

 

 主人公は酒場から酒場へと飲み歩く。行く先々で、歌と寸劇、詩の朗読といったヴォードヴィル的な見せ場が展開、これは大いに楽しんだ。綱渡りやカースタントまで出て来る。主人公が場面毎に衣装替えし、男装、女装、ケバケバしい衣装の人物が次々登場する様は70年代ベルリンのイメージを裏切らない退廃美。夜の街を彷徨う主人公の傍にはベルリンの壁が。モビー・ディックという名の客船。デヴィッド・リンチを思わせる赤い緞帳と小さい人。グラスやボトルの割れる音が響き、ラストはガラスの路を進む主人公の足元。酒場の場面に『アルファヴィル』のエディ・コンスタンティーヌが出てた。

 

 「男女の酔っ払いでは他人の見方が違う、男はその飲みっぷりもまた男らしいと肯定されるが、女はだらしない下品だと否定される」なんて台詞も。そんな性意識に対する反抗も映画のベースになっている。