Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『デニス・ホッパー 狂気の旅路』(ニック・エベリング)

 

 アマプラにて、ニック・エベリング監督『デニス・ホッパー 狂気の旅路』(2016年)鑑賞。長年ホッパーの右腕として働いていたサティヤ・デ・ラ・マニトウを語り部に、ハリウッドの異端児デニス・ホッパーの半生を描くドキュメンタリー。問題作『ラストムービー』を中心に貴重な映像が次々登場、大好きな『アメリカの友人』『アウト・オブ・ブルー』のエピソードも多数出てきて感激した。

 

 語り手のサティヤ・デ・ラ・マニトウは『ラストムービー』の頃から長きに渡りホッパーのアシスタントを務めた人物。ホッパーが晩年ハリウッドの「ウォーク・オブ・フェーム」に名を刻んだ時もサティヤへの感謝を述べている。本作を見ると仕事のパートナーを越えた友人として深い付き合いがあったことがわかる。思い入れたっぷりの語り口がいささか時折鬱陶しくもあるけれど、『ラストムービー』のロケ地(ペルー)を再訪する最後のシークエンスなどサティヤの熱い思いが伝わり感動的だった。

 

 本作ではアーカイブ映像やインタビューから、ホッパーの俳優、映画監督、写真家、美術コレクター等様々な側面を描き出す。インタビュー映像にはヴィム・ヴェンダースフィリップ・モーラ、ディーン・ストックウェル、ラス・タンブリン、リンダ・マンズ(!)らが登場。ホッパーの弟も出演し兄との思い出を語る。インタビュー映像には製作に携わった映画会社の関係者、サティヤの同業者(ハリウッドセレブのアシスタント)たちも登場。ハリウッド映画作りの裏側を垣間見れるのも面白かった。

 

 個人的には、大好きな『アメリカの友人』のエピソードがたくさん出てきてとても興味深かった。トム・リプリー役は当初ジョン・カサヴェテスにオファーしていたが、カサヴェテスがホッパーを推薦したとのこと。ビリヤード台で自撮りする場面はホッパーのアドリブだという。ホッパーは劇中に出てくる救急車を気に入り買い取って乗り回していた。酒とクスリの治療更生施設に入院する時はそれに乗って行ったという。等々。

 

 ヴェンダースが語るホッパーとブルーノ・ガンツの交流も面白かった。当時ガンツは映画初出演で緊張しており、ホッパーがアドリブを交えたフリーな演技をするのでそりが合わず、ついに殴り合いのけんかになり撮影は中断してしまった。翌日現場に現れた2人はすっかり仲良くなっていたが、泥酔状態で撮影にならなかったと。けんか→痛飲→友情といういかにもなエピソードだけと、そんなガンツとホッパーの2人の様子を想像すると実に面白い。

 

 語り手のサティヤは『アメリカの友人』にちょい役で出てるという。何の役かと思えば、フラーの手下のサングラスの男!