Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『異人たちとの夏』(大林宣彦)

 

 大林宣彦監督『異人たちとの夏』(1988年)鑑賞。久々の再見。早稲田松竹にてレイトショー。山田太一原作(脚色市川森一)によるノスタルジックな味わいの怪談話。大林演出はサービス精神たっぷりで、個人的にはもっとさりげない方が好みだけれど、以前見た時よりずっと楽しめた。てかこんな良い映画だったかと。

 

 大林監督のホラー演出は、冒頭で主人公がドラマの女の子が死ぬショットを何度も巻き戻して見ている場面、地下鉄無人駅の取材で仲間とはぐれる場面、女と必ず後背位で交わるとか、幸せなのに痩せ衰えていく感じとか、かなり禍々しくて良い。クライマックスはさすがにやり過ぎと思うけど、そこがまた大林監督らしいところか。

 

 主人公は離婚したばかりの中年シナリオライター風間杜夫)。少年時代に住んでいた浅草を散策していたところ、死んだはずの両親(秋吉久美子片岡鶴太郎)と遭遇する。本作の見どころは、何と言っても両親との交流場面だ。実にムードたっぷりに描かれていて、ビール、手作りのアイスクリーム、きゅうり、花札、といった小道具も印象に残る。まあ正直言って、自分より若い両親と対話するというシチュエーションは反則ですよ。そしてキャッチボール。『フィールド・オブ・ドリームス』にも同様のシーンがあったけど、あれは泣く。

 

 出演は風間杜夫秋吉久美子片岡鶴太郎名取裕子、永島敏行ほか。ドラマの脚本読みをする場面に幸宏さんが出てた。映画はこんな風に亡くなった人たちに再会できる場でもあるなと。