Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『NOUVELLE VAGUE 山田宏一写真集』


 映画評論家・山田宏一氏の写真集『NOUVELLE VAGUE 山田宏一写真集』(2013年)を読みました。山田宏一氏と言えばトリュフォーヌーヴェルヴァーグ!収録された作品は、ゴダールの『アルファビル』やジャック・ドゥミの『ロシュフォールの恋人たち』、『トリュフォーの思春期』といった名作の撮影風景、1968年のカンヌ映画祭中止騒動の記録、そして女優アンナ・カリーナのアパルトマンを訪ねて撮影されたポートレート・・・。本書は写真展(2010年開催)で展示された作品に文章を添えたものということでボリュームは少なめですが、この時代のフランス映画に興味のある人なら感動間違いなしの貴重なドキュメントとなっています。名著『友よ映画よ/わがヌーヴェルヴァーグ誌』、『ゴダール、わがアンナ・カリーナ時代』と併せて読むべき素晴らしい一冊です。


 本書のハイライトは、何と言ってもアンナ・カリーナポートレートでしょう。『ゴダール、わがアンナ・カリーナ時代』でも紹介されていたこの1枚は必見です。アンナ・カリーナといえば、ジャンヌ・モローと並んでヌーヴェルヴァーグの代表的な女優であり、最もポピュラリティを持っていた60年代ゴダールのミューズです。取材を口実に彼女のアパルトマンへと出向いた山田氏は、憧れの女優とふたりきりとなってポートレート撮影に成功します。天窓もないだだっ広い屋根裏部屋だったという彼女の私室で、電気スタンドと彼女が灯してくれたロウソクの光(と「念力」)だけで撮影されたというこのショット、薄明かりの中で微笑むアンナ・カリーナの表情は本当に愛らしい。憧れの女優を撮影出来た!という氏の幸福感、そして彼女の人柄の良さが伝わってくるようです。


ゴダール、わがアンナ・カリーナ時代

ゴダール、わがアンナ・カリーナ時代