Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『ストーカー』(アルカジイ&ボリス・ストルガツキー)

ストーカー (ハヤカワ文庫 SF 504)

ストーカー (ハヤカワ文庫 SF 504)


 タルコフスキーの『ストーカー』の原作本が出ていたので読んでみました。1972年の作品で、原題は『路傍のピクニック』といいます。原作者はロシアのSF作家アルカジイとボリスのストルガツキー兄弟。異星人が訪れた痕跡とされる汚染地帯「ゾーン」に侵入して、遺留品を持ち帰っては売り飛ばす「ストーカー」と呼ばれる裏商売の男たちを描いています。疲弊しきった「ストーカー」たちの描写、「ゾーン」で栄えた町の人間関係、想像を絶する様々なトラップが仕掛けられた「ゾーン」の描写、「ゾーン」から持ち帰った様々な謎の物体、と実に面白い。ゾーンに入る際にものものしい防護服を着用するとか、子供たちに影響が出るとか、今となっては原発事故や放射能汚染をストレートに連想せざるを得ない描写も満載されていました。


 はて、こんなに面白いお話だったかなあと気になったので、タルコフスキーの映画版も見直してみました。20年ぶりくらいかな。そしたら、記憶にあった通りのもの凄く思わせぶりでかったるい映画だったんで、妙に安心しました。『惑星ソラリス』の時と一緒で、粗筋は原作と同じだけど、大真面目な顔で別の方向を向いちゃってるタルコフスキーの「俺節」でしたね。採用されなかったストルガツキー兄弟によるシナリオが『願望機』として出版されているようなのでこちらも読んでみたい。


 解説によると『ストーカー』に影響を受けたウクライナ製のゲームがあるそうで、全然楽しくなさそうでかえって気になるなあ。