Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『冬の日誌』(ポール・オースター)

 

 

 思うところあって、久しぶりにブログを再開することにしました。最後の更新が2018年の10月だったので、何と3年以上間が空いてしまった。

 

 さて、久々の更新は読書記録です。

 

 ポール・オースター『冬の日誌』Winter Journal(2012年)読了。ポール・オースターは、学生時代に初期のN.Y.三部作(『幽霊たち』『鍵のかかった部屋』『シティ・オブ・グラス』)を読んで衝撃を受けて以来、ずっと気にしている作家だ。N.Y.三部作は勿論、『ムーン・パレス』『偶然の音楽』『幻影の書』あたりが特に好きな作品。

 

 本書は64歳となったオースターが、少年時代からの生い立ち、家族や親族、出会った女性たちなどについて振り返った、自伝的コラージュ。本書は「ある身体の物語」ということで、経験した病気や怪我、事故などについても詳細に記述している。これまで移り住んだ家を順番に紹介していく部分が特に面白かった。これ自分でも書いてみたいなと思った。オースターのようにパリ暮らしをしたわけでもないので、そんなドラマティックなものにはなるまいが。引っ越しの数だけなら負けてないので。

 

 本書の最後の部分はこうだ。

 「君は64歳だ。外の空は灰色、ほとんど白く、太陽は見えない。君は自問する。あといくつの朝が残っているのか?ひとつのドアが閉じた。別のドアが開いた。君は人生の冬に入ったのだ。」

 

 64歳、冬の時代へ、という訳だ。自分はまだ先の話だけれど。さしずめ今は秋の時代か?